僕は良く、自分の子供に泣かされる。
うちの息子4歳は、未だにパパの抱っこで寝る。パパの帰りが遅ければ観念して布団に入るけれど、パパが早く帰ってくれば必ず抱っこを要求する。
しかし彼には妹がいる。彼女はまだ2歳だ。2歳児は当然、まだ聞きわけがよろしくない。抱っこして欲しいと泣き喚く。先に抱っこして欲しいのに、我慢を強いられるのはいつも息子の方。妹が抱っこで寝るのを布団の中でじっと待ち、妹がパパの手で布団に降ろされてから、抱っこしてもらう。
ところがここ数日、パパに抱っこしてもらえない日が続いた。パパの帰りが遅かったわけではない。妹がなかなか眠りに落ちないので、待ちきれずに布団で眠ってしまったのだ。そんな息子を見てかみさんは言った。「ミーちゃん(娘)がなかなか寝ないなら、先にコウちゃん(息子)を抱っこしてあげたら?」
そしてそれは昨日のこと。
いつも彼は、何とかして先に抱っこしてもらおうと考える。彼が昨晩講じた策は、「妹よりも先に『抱っこして』とパパにお願いすること」だった。「先に僕がお願いしたんだ」と彼は、妹に向かって主張する。しかしそんなことを聞く2歳児ではない。「ダメ。あたしが先。」と引かない。お互いの主張は繰り返され、終いに娘は泣き出す。
僕の中では、先にも書いたように、抱っこしてあげられない日が何日か続いていたので、この晩だけは息子のわがままを聞いてあげようと思っていた。娘には悪いけれど、泣こうが喚こうが、この晩だけは2歳児に我慢を強要するつもりでいた。
それはかみさんも同様だったようで、泣き喚く娘をなんとかなだめようとする。5分か10分か、もっと長く感じられた説得の時間は過ぎ、娘は泣き止んだ。そして「誰が先に抱っこ?」というママの問いに「コウちゃん」、「その次は?」「ミーちゃん」と答えた。
やれやれようやくだ。ようやく君を抱っこできるよ息子よ。いつも我慢してもらってすまないけれど、今日だけは君が先に抱っこだよ。さぁ、パパの胸に飛び込んでおいで!…と思ったその時。彼は言った。
「…ミーちゃん先に抱っこでいいよー」
もうね、泣いた。マジで泣いた。何て優しい子なんだろうと自分の息子に感動した。たかが抱っこだけどさ、それを4歳児が我慢して人に譲るのって、どんな気持ちなんだろうと思った。
もうすぐ20kgに到達する息子を、いつまで抱っこし続ければ良いのだろう、どうやって止めさせたら良いのだろうと、腰に持病を抱える老体は真剣に考えているのだけれど、息子が嫌だと言い出すまでは抱っこし続けてあげたいとそう思った。